2012年8月17日金曜日

ドゥームズデイ・ブック

ドゥームズデイ・ブック〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)
コニー ウィリス
早川書房
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ドゥームズデイ・ブック〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)
コニー ウィリス
早川書房
売り上げランキング: 71523
コニー・ウィリスの作品にはここから入ったので私自身非常に強い印象をもつ作品です
ジャンルとしてはタイムトラベルモノで、21世紀のオックスフォードの大学生が歴史の調査で中世ヨーロッパにタイムトラベルすると言う話です。 タイムトラベルの設定はあまり語られないのでSFとしてはどうなのかと言う人もいるのですが私は結構好きです。 作品の中で語られていますが、中世ヨーロッパの文化については結構謎が多いようで、当たり前ですが録音装置のない当時の人が話していた言葉の音とかは現在はわからないとか、歴史に興味がある人がワクワクするようなネタが満載です。 SF好きにも歴史好きにもおすすめ出来ます。

2012年8月14日火曜日

第六ポンプ

第六ポンプ (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
パオロ・バチガルピ
早川書房
売り上げランキング: 37678
「第六ポンプ」は、「ねじまき少女」のパオロ・バチガルピの短編集です。
パオロ・バチガルピって、どこの国の人と思うのですが、アメリカ人なんですね。

さて、「第六ポンプ」ですが、最近のSFの中では非常に私の評価は高い作品群でした。
私のお気に入りは、「砂と灰の人々」、「パショ」、「フルーテッド・ガールズ」、「ポップ隊」ですかね。

SFというものが大抵そうなのかもしれませんが、パオロ・バチガルピの作品は、○○後を描く作品が多いような気がします。
○○後には、狂牛病後かもしれないし、新型インフルエンザによるパンデミック後かもしれないし、9.11後かもしれないし、福島原発メルトダウン後かもしれないわけですが、現在の価値観とは連続ではない限界を超えてしまった未来の世界を描いていて、そこに対する驚きを描き出すところが魅力なんだと思います。

特に私がとても好きな話は「砂と灰の人々」でしょうか。

地上で疫病が流行り、食物が取れなくなり、人間は生き延びるために遺伝子改良をして、灰や砂を食べても生きていけるようになった社会。
ある日主人公たちが荒野で偶然に本物の犬を拾う。
そもそも食料が手に入らないような世界で、生身の犬を飼うのはとんでもなく高コストなわけです。でも、生きた動物を飼ったことがない主人公たちはだんだん犬に愛着を感じ始める…。
物語がどこに向かうのかはぜひ読んでいただきたいのですが、そういう風に究極的に地球環境が破壊されて、その中でも人間だけは科学技術の力で生き残っていく。そういう世界を見せてくれる。そして、でもそれがどんな意味を持つのか、答えは教えてくれないにしても、物語の結末を読んだ後に考えさせられる作品だと思います。


ねじまき少女 上 (ハヤカワ文庫SF)
パオロ・バチガルピ
早川書房
売り上げランキング: 91165

2011年6月18日土曜日

水惑星年代記

ごめんなさい、今回もマンガの紹介です。



昔から気になっていたSFマンガ。
今回は知人から借りてしまいました。読んでみてこれは買ってもよかったなと思いました。
でも、どれが最初なのかわからなくて、悩んで買わなかったんですよ。
本屋さん、どの順番なのかわかるようにしていただければ買いますよ!

内容は軌道タワー、量子通信、リアルな天体観測、ネコ、トロリー線、青春ありで、ちょっとファンタジーも混ざっているような感じ。
おおむねSF要素はソフトに扱われているので、小難しい話はあまりないかも。

シリーズではない短編的な話が積み重なり、だんだんと関係がわかってくようなお話みたい。

世界観的には、妙なる技の乙女たちに出てくるような感じかな。
軌道タワーのある南の島にあってそこで働く女性達がでてきたり(出自は逆だろうけれど。)します。
アニメだとRD潜脳調査室みたいな世界が近いかも。

どうやら、作者が天体観測を実際にしているらしく、望遠鏡をちゃんと描いているのが個人的には好感が持てる。

短編集みたいなのに抵抗がないSF好きにはお勧めです。


妙なる技の乙女たち
妙なる技の乙女たち
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小川 一水
ポプラ社
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2010年11月27日土曜日

キリンヤガ

キリンヤガ (ハヤカワ文庫SF)
マイク レズニック
早川書房
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ハードSFではないのですが、最近のSFのなかでは感動作です。各賞総なめな理由もうなずけます。「空にふれた少女」がよいとされていますが、私も非常に気に入りました。 あらすじは、文明に侵されてしまったアフリカの種族キユク族の末裔コリバが、連邦の力をかりて、ある惑星に、もう一度、キユク族の楽園を作ろうとします。伝統を重んじ、科学による変化を一切受け入れさせないようにしようと努力していきますが、はたして、「変化しない文化」は実在するのでしょうか?コリバやその楽園の人々の葛藤が、文学的に表現されていて、とても美しい作品です。

2010年11月26日金曜日

リメイク

リメイク (ハヤカワ文庫SF)
コニー ウィリス
早川書房
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ドゥームズ・デイ・ブックのコニー・ウィリスの別のタイムマシンもの。期待大だったのだけど、大量の映画の引用があって、よくわらかんかった。昔の映画をたくさん知っている人にはいいかもしれんが、私には苦痛以外のなにものでもありません。

一点だけ気に入っているのは、『1940年代のミュージカルが「陽気で単純だった時代」を反映していたからではなく、それがありえないものだったから。』という一節。その時代を生きた人にとってのミュージカルはどこか悲しささえ感じるものだったのかもしれないですね。

楽園の泉

楽園の泉 (ハヤカワ文庫SF)
アーサー・C. クラーク
早川書房
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軌道タワーもののはしり。軌道タワーはクラークが提案したとかなんとかいう都市伝説が。実際には、ロシアの科学者が提案したんじゃなかったっけ。しかし、軌道タワーが天空からつりさげられるものだということは一般にあまり知られていないようですね。私はスカイフックの方がすきですが。
SFとしては、すごく感動するというわけでもないんだけれど、軌道タワーの特性についてはよく理解できる。特に、宇宙船で軌道まで行く場合は、宇宙速度を出す必要があるんだけど、軌道タワーではその必要がないってところがみそではないでしょうか。

2010年9月12日日曜日

ジュブナイルはどこに消えたのか?「軌道通信」

最近、
軌道通信 (ハヤカワ文庫SF)
ジョン バーンズ
早川書房
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を再読しました。

ストーリーは「13歳の少女を通して、地球と火星の間を往復するような軌道に配置された理想社会的な小惑星宇宙船?の中の生活を描いた話」ということになる。小惑星宇宙船の中にすむ人々は、協調性に優れていて、地上の人々のような争いや、いじめがほとんどない理想的な環境にいきているように見えるのだけれど(そこらへんが理想的空想的のよう)。だけれども、ひょんなことから少女の父親(精神科医)が告白する場面がある。

「わたし自信、深くかかわっているんだからね。おまえはニホンアメリカの完璧な社員だ。わたしたちはできるかぎりの条件づけをした。そしておまえは期待通りに育ってくれた。船を離れたいなんて思うことはぜったいない。おまえが価値があると思うものは、すべてここにあり、おまえが信じていることは、すべて船をスムーズに運営することにつながっている。わたしたちには、おまえをいい人とか、かしこい人とか、親切な人にすることはできないが、ここにいたいと思わせるようにすることはできる。たのしいと思うことはすべてチームワークから得られるように条件付けることはできるんだ」

ちゃんと理想社会を形成するための動機とその方法がSFの背景としてあることに脱帽。そしてブラック(笑)。なぜ、自分の子供にまで洗脳をしなければならないのかにも、ちゃんとした理由があることも少女本人に丁寧に説明する姿があった。その回答とは、要約すると「人類が生き残るためには、父さんたちは、どんな手段でも使う」というもの。理想社会の裏側に構築された論理はとても鋭利な論理でできあがっているということを少女の視点からうまく表現していると思った。

さて、余談ではりますが、この話のながれは、「星界の戦記」に似ているなぁと思う箇所が何カ所かあり。たとえば、地球環境を破壊し尽くしてしまった地上人のことを少女は友達と「ツチブタ」と言う表現で話したりしたりしますが、この表現は私は聞いたことがありません(ひょっとして英語表現?)で、星界の戦記でもこの表現が古語としてでてきているので、うーん、星界の作者がこの話が好きだったのかなぁと想像しております。

それにしても、こういうたぐいの子供の視点でのSFって最近みないなぁ。なんでなくなっちゃったんだろうなぁ。よい作品がたくさんあったのに残念です。