2012年8月14日火曜日

第六ポンプ

第六ポンプ (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
パオロ・バチガルピ
早川書房
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「第六ポンプ」は、「ねじまき少女」のパオロ・バチガルピの短編集です。
パオロ・バチガルピって、どこの国の人と思うのですが、アメリカ人なんですね。

さて、「第六ポンプ」ですが、最近のSFの中では非常に私の評価は高い作品群でした。
私のお気に入りは、「砂と灰の人々」、「パショ」、「フルーテッド・ガールズ」、「ポップ隊」ですかね。

SFというものが大抵そうなのかもしれませんが、パオロ・バチガルピの作品は、○○後を描く作品が多いような気がします。
○○後には、狂牛病後かもしれないし、新型インフルエンザによるパンデミック後かもしれないし、9.11後かもしれないし、福島原発メルトダウン後かもしれないわけですが、現在の価値観とは連続ではない限界を超えてしまった未来の世界を描いていて、そこに対する驚きを描き出すところが魅力なんだと思います。

特に私がとても好きな話は「砂と灰の人々」でしょうか。

地上で疫病が流行り、食物が取れなくなり、人間は生き延びるために遺伝子改良をして、灰や砂を食べても生きていけるようになった社会。
ある日主人公たちが荒野で偶然に本物の犬を拾う。
そもそも食料が手に入らないような世界で、生身の犬を飼うのはとんでもなく高コストなわけです。でも、生きた動物を飼ったことがない主人公たちはだんだん犬に愛着を感じ始める…。
物語がどこに向かうのかはぜひ読んでいただきたいのですが、そういう風に究極的に地球環境が破壊されて、その中でも人間だけは科学技術の力で生き残っていく。そういう世界を見せてくれる。そして、でもそれがどんな意味を持つのか、答えは教えてくれないにしても、物語の結末を読んだ後に考えさせられる作品だと思います。


ねじまき少女 上 (ハヤカワ文庫SF)
パオロ・バチガルピ
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